九州地銀、相次ぐ融資拡大 太陽光参入支援、手取り足取り
「太陽光発電に参入したいのだが……」。昨夏、鹿児島銀行に取引先の機械販売会社からこんな相談が持ち込まれた。同行の担当者はすぐさまこう応じた。「一緒に事業計画を考えましょう」
鹿児島銀が大規模太陽光発電所(メガソーラー)参入を狙う顧客向けに用意した支援メニューは事業計画策定にとどまらない。太陽光パネルメーカーや設置工事の施工会社も紹介。資金融資までパッケージで支援する。
至れり尽くせりの支援も奏功。同行の太陽光発電向け融資残高は2012年3月期のゼロから、13年3月期は147億円に急増する見通し。「太陽光向けでは九州の地銀でトップクラス」(営業支援部)と胸を張る。
■九電OB迎える
12年度適用分では、1キロワット時あたり42円の価格が20年間保証される太陽光発電。安定した収益が見込めるとあって、九州・沖縄の地方銀行は融資を競う。
「御社の遊休地にメガソーラーを建てませんか」。西日本シティ銀行では、専門チームが企業や自治体への営業に余念がない。取引先からの相談を待たずに、案件獲得へ自ら動く攻めの部隊だ。
同行は昨年、支店の約600人に太陽光発電についての研修を実施、専門チームと連携して営業を展開する。13年3月期のメガソーラー向け融資残高は約30億円の見込み。「14年3月期に80億円程度を目指す」と浦山茂取締役は力を込める。
大分銀行は専門チームに九州電力のOBを迎え入れた。「難解な電力分野のノウハウを拡充する」(営業支援部)目的。50キロワットを超える太陽光向け融資額として13年3月期に約50億円を見込む。
金利競争も始まっているもよう。店舗での太陽光パネルの設置を進めるディスカウントストア大手のMrMax。財務担当者は「通常の融資より優遇した金利を示す金融機関もある」と話す。
収益が手堅く見込める太陽光発電だが、リスク管理も不可欠だ。
各行のメガソーラー向け融資の多くは返済期間が10~15年間。制度の買い取り期間、20年間よりも短い。太陽光パネルの出力が老朽化で徐々に低下することを想定、資金回収を急ぐためだ。
■手探り続く
宮崎銀行は東京海上日動火災保険などと提携して、建設予定地の地盤液状化などのリスクを査定するサービスを開始、「事業計画の確実性を見極める」(営業統括部)。鹿児島銀の新規参入支援も、早くから事業に関与することで、資金回収を確実にする狙いがある。
資源エネルギー庁の試算では、メガソーラーの設備投資額は1メガワットあたり約3億円。多くの事業者は2~3割を自己資金、残りを借入金で賄うという。13年度の買い取り価格の引き下げがささやかれる中、事業者に求める自己資金の増額を検討する地銀も現れた。
各行のメガソーラー向け融資は前期までほぼゼロ。経験やノウハウの不足は否めない。ある地銀幹部は「経験がなく、事業の先行きが見通しにくい」と打ち明ける。数少ない成長分野とはいえ、各行は手探りによる競争を強いられている。