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太陽光発電「特需」、恩恵には明暗 電池・部材製造は苦戦

太陽光発電の普及が加速するなか、関連産業への波及効果で明暗が分かれてきた。住宅メーカーや施工業者は人手不足に陥るほどの活況に沸く一方、太陽電池メーカーや部材加工会社は中国製との競争激化で事業を縮小するケースも出てきた。

 再生可能エネルギーを電力会社が全量買い取る制度が導入されたのは2012年7月。政府の認定を受けた太陽光発電設備は設備容量ベースで約326万キロワット(11月末時点、未稼働分を含む)に達した。制度開始前の国内全設備の6割に当たる規模の設備が増えることになる。太陽光発電協会(東京・港)によると12年4~9月の太陽電池の国内出荷量も107万2261キロワットと前年同期に比べて8割増えた。

 恩恵を受けているのは施工業者だ。積水ハウスは13年1月期の既存住宅向け施工件数が10月までに、前期の2倍の5400件を超えた。大林組は太陽光発電の関連工事の受注件数が7月以降、開始前の3カ月間の月平均に比べ5倍超となった。

 施工会社のゴウダ(大阪府茨木市)は13年10月期の太陽光発電の施工事業の売上高が約60億円と、前期の2倍に増える見通し。急激な受注増で「施工する職人が足りない」(同社)ため、受注を抑制しているという。

 太陽光発電に使う電力変換装置(パワーコンディショナー)も好調だ。最大手の東芝三菱電機産業システムは、主力の出力500キロワットのパワコンの12年度の出荷量が前年度の10倍を超えるペース。安川電機も12年度下期のパワコン生産量が上期の10倍となる見通しだ。

 一方、太陽電池メーカーや関連部材メーカーは苦戦している。日本製に比べて3~4割程度安い中国製品との競争で値下がりが激しいためだ。

 シャープは葛城工場(奈良県葛城市)での太陽電池の生産を縮小し、堺工場(堺市)に集約。昨年12月からは米大手から調達を始め、自社生産比率を下げた。パナソニックも12月にマレーシアの新工場を稼働したが、今後は当面太陽電池パネルへの投資を凍結する。

 関連材料も厳しい。大陽日酸は独化学大手と合弁で手掛けていた太陽電池の製造工程などに使う特殊ガス製造から9月に撤退。JX日鉱日石エネルギーは11月、太陽電池材料のシリコンウエハー事業からの撤退を決めた。ウエハー加工でも大阪富士工業(兵庫県尼崎市)が国内の生産拠点だった尼崎市内の工場を閉鎖し、事業から撤退した。

 太陽光発電は現在、電力会社が1キロワット時42円(税込み)の固定価格で電気を全量買い取っており、事業参入を促している。ただ経済産業省は13年度の買い取り価格について、太陽光は設備の値下がりを反映して引き下げる方向で検討している。設定価格によっては関連部材業界が一段と厳しくなる可能性もある。

(記事:日本経済新聞)