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注目の太陽光発電システム、“今が買いどき”の理由とは

 太陽光発電システムがエコで経済的なライフスタイルを実現する方法として、既に多くの人に注目されている。某電機メーカーが全国の男女1万6,000人余りに行った調査によると、太陽光発電システムに興味・関心があると回答した人は66.8%と全体の3分の2にのぼるという。

 では、興味・関心がある人にとって、太陽光発電システムを検討するにあたってどの点について知りたいと思っているのだろうか。先ほどの調査によると、「元が取れる年数(68.9%)」「年間で節約できる電気代(66.1%)」「余った電力を電力会社が買い取る売電制度(63.3%)」「導入に際しての国や自治体の補助金制度(54.4%)」などに回答が多く集まり、導入コストやその後の経済性に強い関心を持っていることがわかる。

フィナンシャルプランナーの深野康彦氏
 「国内外の企業の市場参入などを背景に価格競争などが起こり、太陽光発電システムの導入コストは以前に比べてかなり下がってきた」。そう話すのは、フィナンシャルプランナーの深野 康彦氏。深野氏によると、経済産業省の専門委員会では「太陽光発電システムは、2012年7月の電気買取制度開始以降、その導入が拡大し、家庭用を含めて、年率10%程度、設置費用が下がった」という調査結果を公表しているのだという。

 ただ、導入コストが下がったことを喜んでばかりはいられない。経済産業省はこのような実態を踏まえて、「設置費用の価格低下を2013年度の買い取り価格に反映させる」とし、太陽光発電システムで発電した電気の買い取り価格を、現在の1kWhあたり42円から、2013年度は30円台後半まで引き下げるという考えを示しているのだそうだ。

 深野氏は、「もともと電気の買取制度は太陽光発電システムの普及を目的に設定された。太陽光発電システムの導入費用が下がれば下がるほど、補助金や売電の際の買取価格は当然下がっていくと考えるのが自然だろう。専門家の間では、将来的には、太陽光発電システムで発電した電気の買取価格は、電気代と同じ水準まで下がるのでは、とも言われている」と語る。つまり、これから先、太陽光発電の買取価格は、下がることはあっても、上がることは決してないとみられるのだ。

電気買取価格、補助金が約束された今が買いどき
 深野氏によると、政府では現在、太陽光発電システムの導入に要した投資資金の回収は「10年が目安」ということを旗印に様々な取組みを行っているという。

 ひとつが、一般住宅に多い出力10kW未満のケースで採用されている、10年間買取価格を一定とするなどの「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」。もうひとつが、国や地方自治体から支給される補助金だ。

 多くの国内メーカーでは、この固定価格買取制度と補助金を組み合わせることによって、およそ10年間で投資資金を回収できることを目安に、積載するパネルの総出力数などを推奨しているという。これらを元に、導入時に10年間のシミュレーションを行うと、電気代の収支計画がある程度約束されることになるのだ。

 「太陽光発電システムの導入価格が下がるほど、トータルコストが考慮されて、買取価格や補助金も下がると考えられる。導入時期を検討する際に、システムの普及による大幅な価格の低下を期待して待つのか、買取価格・補助金の高いこのタイミングで導入を決断するのかは非常に悩ましい問題ではあるが、買取価格、補助金をあわせて、約10年間で投資資金を回収することがある程度保証された“今”は、導入を決断すべき絶好のタイミングと言えるだろう」と深野氏は語る。

 前述したように政府は既に電気の買取り価格引き下げに動いており、補助金も政府の予算がなくなってしまうと、制度自体も途中で終わってしまう。国内メーカーの多くが設定している太陽光発電システムの保証期間も10年間なので、補助金、買取価格が約束されて、なおかつ導入価格が下がってきている“今”のタイミングであれば、ほぼ損をしないと言えるのだ。

 「今後、ますます電気代が上がっていくことが予測されている。何もしないで高い電気代を払い続けるよりも、電気代の値上げとは連動せずに、この先10年間、一定の価格で発電した電気を買い取ってもらえるということは、リスクが少ないばかりか、有効な設備投資のひとつとも言えるのではないだろうか」(深野氏)。

補助金の対象は、太陽光発電システムだけではない
 太陽光発電システムとセットで導入したいものに「HEMS(Home Energy Management System)」というものがある。「HEMS」とは、センサーやIT技術を活用したエネルギーマネジメントシステム。太陽光発電や蓄電池をテレビやエアコンなどの家電製品と繋げることで、つくった電気、蓄えた電気、使った電気の量が、モニターやスマホなどで見られるほか、時間帯によって家電で消費される電気量を自動制御できるようになり、効率よくエネルギーをマネジメントすることが可能になる。また、「エネルギーの見える化」により、使う人の節電意識も高まることから、知らず知らずのうちに、節電ができることも期待されている。

 深野氏によると、東日本大震災以降大きな問題となっている電力不足やCO2排出削減という観点から、政府でも現在「HEMS」の普及促進を図っており、その対策のひとつとして、「HEMS」を購入する際には補助金(エネルギー管理システム導入促進事業費補助金)が支給されることになっているのだという。「太陽光発電システムに関する電気買取制度や補助金は知られているが、HEMSが対象となるエネルギー管理システム導入促進事業費補助金については、意外に知られていないようだ」(深野氏)。

 現時点での補助金の額は、10万円の定額制。現在、各メーカーから販売されている「HEMS」の希望小売価格もほぼ10万円前後で、今ならほとんど出費することなく「HEMS」が導入できる。ただし、この補助金制度の応募期間は2014年1月31日までで、予算枠の限られた補助金だ。期間内であったとしても申請の合計金額が予算額に達した場合は、その時点で終了するほか、2013年4月を目処に市場実勢価格を踏まえた補助額(定額)の引き下げを行うことも予定されているのだという。

 「補助額が下がることは、システムの導入コストが下がることを前提としているので、トータルコストとして見ると、プラスもマイナスもないと考えてもよいのかも知れない。しかし、補助金制度というのはいつ終わってもおかしくはない性質のもの。そう考えると、10年で導入コストの回収が見込める電気の買取価格・太陽光発電システムへの補助金に加え、HEMSの補助金と、トリプルでメリットが揃うタイミングも、まさに“今”と言えるのではないだろうか」(深野氏)。

太陽光発電で得をするかは、導入11年目からで決まる
 太陽光発電システムは、現在の制度下では10年を目処に投資資金を回収することが出来るようになっており、メーカーのシステム保証期間も10年とされているところが多い。つまり、今導入すれば、10年間はほぼ損をしないと考えられるわけだが、11年目以降はどうなるのだろうか。

 深野氏は、「導入前のカタログ数値上のシミュレーションよりも、実際に使用した際の発電性能が高く、思った以上に売電出来たり、電気代を節約出来たりする例もあるが、導入から10年以内で起きることは、あくまでも、投資資金回収のプロセスに過ぎないと考えるべきだ」と語る。

 その上で、「太陽光発電システムの導入で“得”をしようと考えるならば、ぜひ11年目以降の性能値にも着目していただきたい」と指摘する。10年間で投資コストが回収出来て、プラスマイナスゼロならば、本当の意味で”得”をするためには、11年目以降もしっかり発電を続け、電気代(光熱費)の節約に貢献できる太陽光発電システムでなくてはならないからだ。

 ちなみに、日本の住宅で最初に太陽光パネルを設置した人は、太陽光パネル「アモルファス」の開発に携わっていた技術者の桑野幸徳さん(当時:三洋電機)。1992年7月31日に竣工し、「桑野太陽光発電所」と呼ばれる日本初の太陽光住宅は、竣工から20年以上経った今も、太陽電池は1度の故障もなく安定して発電を続けているのだそうだ。

 太陽光発電システムの導入を真剣に考えている人は、深野氏の指摘するようにシステム導入価格、電気買取価格、補助金のバランスが安定している現在を重視したうえで、11年以上使用しても十分な発電量が確保できるシステムの導入を検討するべきだと言えよう。

(記事:読売新聞)