神奈川の中小、太陽光発電に相次ぎ参入 住宅・土木など
神奈川県の中小企業が太陽光発電事業に相次いで参入する。再生可能エネルギーの買い取り制度の開始で事業採算性が高まり、安定収入源としての期待が高まっている。一方、電力の買い取り価格は4月に改定される可能性がある。現在の価格で事業を実施するために、2012年度内の着工を急いでいる。
省エネ住宅のイスズ(川崎市)は相模原市に出力1000キロワットの太陽光発電設備を建設する。残土処理場の跡地3万3000平方メートルを賃借。2月末にも着工し、4月をメドに稼働させる。投資総額は2億8000万円で、金融機関の借り入れのほかに、新商品を開発する企業向けの神奈川県の制度融資も活用する。設備の管理業務はNPO法人のe―デザイン(川崎市)に委託する。
同社は地面に支柱を直接埋め込んで太陽光パネルの架台を作る工法を開発。斜面や荒廃地などの基礎工事を施す必要がなくなり、通常3カ月かかる工期を3分の2に短縮し、工事費用も4~5割削減できるという。同工法は太陽光発電設備以外の用途も見込め、「新設備を新工法のショールーム的な位置づけにしたい」(鈴木和彦社長)という。
土木工事の横浜ライト工業(横浜市)は鹿児島県霧島市に出力860キロワットの太陽光発電設備を建設する。総投資額は2億5000万円程度で、7~8年かけて回収する。本業の土木工事は景気に左右されやすく、安定的な収益を見込める事業を模索していた。センサーや監視カメラなどを設置し、横浜市の本社から管理する。
このたび霧島市内の遊休地2万平方メートル弱を取得した。3月末までに九州電力の認定を受けた上で着工し、6月中旬に稼働させたい考えだ。太陽光パネルの架台の工事を自社で手掛けて「従業員の雇用を確保する」(浜口伸一社長)。設置工事のノウハウを蓄積し、他社の太陽光発電設備の設置工事の受注も視野に入れる。
足元で建設計画が増えているのは、1キロワット時あたり42円の買い取り価格が4月以降に引き下げられる可能性があるためだ。横浜ライトの浜口社長は「発電能力1000キロワットを超える設備も検討したが、手続きに時間がかかりそうだったため、現在の計画に落ち着いた」と話す。
船舶造修工事の佐藤船舶工業(横須賀市)は横須賀市内に450キロワットの太陽光発電設備を建設する。県が基礎調査を実施して誘致を目指していた同市内の民有地9200平方メートルを賃借し、6月の稼働を目指す。総工費は1億~2億円になる見通し。「公共技術で培った技術が生かせる」(同社)と判断した。
(記事:日本経済新聞)