中国の太陽光発電産業、困難乗り切れば見通し明るい
無錫尚徳太陽能電力有限公司は中国で初めて自己破産を申請した大手太陽エネルギー関連企業であり、熾烈な市場競争の中では、低コストの融資と政府の支援があっても、企業が永久に存続する保証はないことを地方政府と企業の管理層は既に実感している。破産手続きが始まった後のプロセスは複雑なもので、市場システムの整備、経営理念と運営モデルの改善が進めば、窮地に立っても、必死の覚悟で挑戦することで、最後には勝利を得られることを太陽光発電産業全体が望んでいる。27日付中国証券報が伝えた。
ここ10年余り、国際市場の盛んな需要と各地方政府の政策支援の下、太陽光発電産業は中国の先進的な設備製造産業と新興エネルギー産業の基幹産業に位置づけられていた。しかし、太陽光発電産業の対外開放型発展モデルは、企業存続を脅かす深刻な潜在リスクとなった。金融危機が発生してから、特に欧州債務危機以降、欧州連合(EU)加盟国の支出は縮小し、太陽光発電産業に関する補助金は次々と削減され、太陽光発電市場の需要の縮小を招いた。また、自国の雇用市場を安定させるため、欧米諸国は度々、中国の太陽光発電製品に対して反ダンピング・反補助金調査を実施し、中国の太陽光発電関連企業の国際的な競争力を弱めた。
最も価値のある教訓として忘れてはいけないのは、国際市場の変化に中国の企業が速やかに反応できなかったことだ。国際市場の需要が縮小している時でも、中国企業はもっぱら生産量の引き上げに振る舞い、特に多結晶シリコンなどローエンド製品の生産高の伸びは過剰で、大きな在庫圧力となった。市場シェアを維持するため、中国企業は価格競争に巻き込まれ、その結果、利益は大幅に落ち込んだ。一方で、中国企業による国内の原材料市場とハイエンド市場の開発が遅れているため、大量の原材料や太陽光発電のコア部品に関連する電力変換装置、電圧安定器などの製品の大半は依然輸入に頼っている。産業チェーンの欠陥に加え、ローエンド製品の発展速度が必要以上に速く、ハイエンドの発展が立ち遅れるという合理性にかけた現象が、企業の貿易収支のバランスを崩し、バランスシート(貸借対照表)の悪化を招いた。
太陽光発電産業はかつて、国家政策指向型産業であり、地方経済を牽引する命綱だった。地方の雇用と経済の安定を維持するため、一部の地方政府は税収を利用して企業の代わりに債務を返済することで、人員削減や統合再編をしばらく見合わせ、或いは破産の可能性を小さくすることはできたものの、それでも企業の債務は山のように積み上がった。政府への過度な依存から脱却し、市場の原則に基づいた運営方法によって新たな資金調達の道を模索することが、企業にとって差し迫った課題である。また同時に、企業は積極的に製品のモデルチェンジ・グレードアップに努める必要があり、単一的な組立て部品の販売から、生産ユニット、発電装置の建設などの川下産業へと事業を拡大させていかなければ、市場での競争力を維持することはできない。
無錫尚徳太陽能電力有限公司の破産手続きは、中国の太陽光発電産業の統合・再編の呼び水となり、過剰な生産能力の緩和にプラスに働くものの、産業全体の生産能力のバランスを調整するには及ばない。需要と価格の周期的な低迷という困難な状況の中、中国の太陽光発電産業は概ね二つのグループに分かれる。一つは破産した無錫尚徳のように、負債の沼に飲み込まれる企業。そして、一方で、バランスシートが健全な一部の企業は、低コスト、低収益のモデルで発展の道を模索しつつ、大企業の破産によって生じるチャンスを手に入れる準備を整えている。
他企業を吸収合併するにしても、再編を迫られたとしても、太陽光発電産業の健全な発展には健全な市場システムが欠かせない。中国は3月1日、『分散型電源の送電網接続サービス』政策の正式な実施を開始し、国内の太陽光発電などの分散型電源の応用に向けた取り組みを開始した。国家『エネルギー発展「十二・五(第12次5カ年計画、2011―2015年)」計画』によると、2015年までに、中国の分散型太陽光発電施設の発電量は1000万キロワットに達し、対外開放型太陽光発電関連企業の発展モデルの転換にとっては、絶好のチャンスとなる。内需に着眼し、企業の競争優位を形成することは、太陽光発電産業の今後の活路である。
中国太陽光発電産業聯盟は、アジア太平洋地域の太陽光発電市場が世界の総需要に占める割合が2015年までに、2010年の11%から26%に上昇すると予測している。中国企業が国際市場の不公平な制裁から逃れる必要があるだけでなく、内需と外需の双方に目を向けなければならない。内需の拡大と同時に国際市場でのシェアを安定させ、太陽光発電市場を欧米諸国からアジア太平洋地域の新興国へと徐々に移転すべきである。
当面の困難な局面を切り抜けることができれば、中国の太陽光発電産業の見通しは明るいものになることが期待されている。
(サーチナニュース)