東松島にメガソーラー 10月稼働予定
津波で流されたコスモスの花畑が、また見られそうだ。東日本大震災で被災した宮城県東松島市野蒜(のびる)地区の奥松島運動公園跡地では、三井物産が復興支援活動の一環として、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設を先月から始めた。今年10月に稼働させる予定。市民に愛されていたコスモスの花畑など、緑地帯も併設される見込みだ。月に1度の特集「東日本大震災からの復興へ 被災地とともに」は、沿岸被災地で計画されるメガソーラーを特集する。
今日11日で震災から1年10カ月。野蒜地区は災害危険区域に指定され、住居の建築が原則として許されず、半壊した建物が現在も点在している。市民の憩いの場だった沿岸の奥松島運動公園も、名所だったコスモスの花畑や遊具も流され、グラウンドは使用不能となった。沿岸を散歩していた67歳男性は「今は何もなくなっちゃって…。また自然が戻ったらいいなあ。僕が生きている間には、間に合わないかもしれない」と複雑な表情を浮かべた。
依然として更地が大半だが、公園跡地の活用構想は着々と進んでいる。「実業を通して復興に協力したい」と願う三井物産と、「復興のシンボルとしてメガソーラーを設置したい」と希望する東松島市の意向が一致。東京ドームとほぼ同じ約4・7ヘクタールの設置面積で、容量1990キロワットのメガソーラーを建設している。
同市復興政策班の高橋宗也班長(51)は「活用できていない土地は、何も生み出さない。1日も早く市民の皆さんに復興を感じていただくために、できることをやりたかった」と説明した。
このメガソーラーは「奥松島『絆』ソーラーパーク」と名付けられ、一般家庭約600世帯分に相当する年間発電量約210万キロワット時を生み出す。発電した電力は全量、東北電力に売電。収入を維持費に回し、災害時は非常用電源になる。発電量や二酸化炭素削減効果を表示する装置を備え、教育施設も併設する。東松島市は11年12月に国から環境未来都市に指定され、再生可能エネルギーの促進を目指している。
特別名勝・松島の地域内にあるため、景観に配慮。メガソーラー周辺に植樹し、緑地を設ける。奥松島運動公園の跡地を含めた野蒜地区では、観光レクリエーション施設や緑地スペースも予定され、コスモスの花畑が復活する可能性は高い。
復興政策班の担当者は「野蒜地区では3本の防波堤を築く予定ですが、かさ上げはこれから。市がまだ買っていない土地もあり、計画段階ですが、適切なところがあればコスモスを植えたい」と話した。
海岸に近い2本の堤防は、3年以内には完成予定。安全が確保された後、美しかった自然を復活させる作業は本番を迎えそうだ。【柴田寛人】
◆被災地のソーラー事情 震災と原発事故に伴い、停電や燃料不足に陥った反省から、再生可能な太陽光発電が注目されている。発電設備の導入により、雇用を創出できるという期待もある。11年度第3次補正予算で計上された「再生可能エネルギー発電設備等導入促進支援復興対策事業費補助金」の補助事業数は、岩手、宮城、福島の被災3県だけで約170件。事務所屋上に置く10キロワットのソーラーから、丸紅が宮城県岩沼市で計画する2万7000キロワットまで、規模はさまざま。東芝が福島県南相馬市で計画する10万キロワットのメガソーラーは、国内最大になる見込み。
(記事:日刊スポーツ)