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集合住宅の太陽光発電 賃貸中心に導入広がる

 発電された電気を電力会社が固定価格で買い取る制度が整備され、急成長する太陽光発電。家庭向けでは、一戸建て住宅で着実な人気が続いているだけでなく、集合住宅でもアパートを中心に、屋根にソーラーパネルを載せた物件が目立ち始めた。ただ、入居している各戸に太陽光で発電された電気が供給されるタイプは、比率が低い。
 ソーラーパネルを搭載した住宅のトップメーカー、積水化学工業の住宅カンパニー集合住宅企画担当部長の鈴木健太郎さんは「うちの新築賃貸住宅では、太陽光発電の比率が上がり続け、今では約九割になっています」と胸を張る。
 アパートのオーナーらが情報交換をする「大家塾」という名前の組織が各地にある。ここでも太陽光発電の話題で盛り上がる。収支計算で太陽光発電が割に合うケースが多くなっているからだ。
 集合住宅の太陽光発電は、パネルで生まれた電気の使われ方で大まかに二分類できる=図。一つは各戸に供給されるタイプ。入居者は一戸建てと同様に、モニター画面で発電状況を見るなどして「ソーラー生活」の気分が味わえる。
 もう一つは、廊下や階段の照明など共用部分のみに供給されるタイプ。災害による停電で電力会社からの電気がストップしても、太陽光発電の電気が非常用として使えるといったメリットはあるものの、通常は入居者は太陽光の恩恵にあまりあずかれない。
 しかし、各戸連係の方が採算は合いにくい。各戸にパワーコンディショナー(家庭で使える電気に変換する装置)を取り付ける必要があることなどから、設備費用がかさむ。このため、各戸連係タイプの方が少ないのが現状だ。
 太陽光で発電された電気は昨年七月から、発電能力が十キロワット以上の場合、全量が電力会社に二十年間同じ価格で買い取ってもらえることになった。十キロワット未満のときは、発電量から自家消費量を差し引いた余剰分を、十年間固定の価格で買い取ってもらう。オーナーにとっては安定収入となる。
 太陽光発電は、パネルの面積が大きいほど発電量が増す。集合住宅では、敷地面積の広い二階建てアパートで採算が合いやすい。
 積水化学工業は、十キロワット超のパネルを搭載した賃貸住宅「BIGソーラー」を昨年夏から全国展開。屋根が平らなため、十キロワットを超すだけのパネル面積が確保しやすく、オーナーの期待に応えやすくなっている。
 アパートでは、既に立っている物件にパネルを載せようと考えるケースも多い。オーナーらにパネル設置を勧める日本エコシステム(東京)の尾上浩二・集合住宅営業推進部部長は「うちは既築物件の方が多い」と話す。オーナー向けセミナーを各地で開き、好評だという。

 分譲マンションは、賃貸住宅に比べ太陽光発電の普及が遅れている。高層の建物が多いことなどから、新築の際にパネル搭載のメリットが大きくなりにくい。戸別連係タイプは特に物件が少ない。既築物件にパネルを搭載するのも難しい。多くの入居者の合意を得にくいからだ。
 ただ、パネルを搭載していると「環境に配慮している」というイメージは出しやすく、太陽光発電マンションも徐々に増えてきた。
 野村不動産は今年後半、名古屋市内に「プラウド川名山ガーデン」(百十六戸)、「プラウド星ケ丘」(八十戸)の二物件を完工させる。屋上緑化や電気自動車充電スタンドなども備えた環境配慮マンション。太陽光による電気は共用部のみの使用で、パネルの発電能力も大きくない。

(記事:中日新聞)