産総研、封止材の工夫でPID耐性に優れたCIGS型太陽光パネルを開発
独立行政法人産業技術総合研究所は18日、封止材にアイオノマー[1]を用いることで、長期のPID[2]試験においても劣化が見られないCIGS型太陽光パネルを開発したと発表した。
太陽光発電システムには、買取期間である10年から20年にわたって安定したパフォーマンスを発揮することが何よりも重要で、そのためには優れた初期特性をもつ太陽光パネルを選定しなければならない。日本よりも早い段階から普及が進んでいる海外では、PIDと呼ばれる産業用太陽光発電システム特有の劣化現象が報告されている。
今後日本国内の産業用太陽光発電システムにおいても発生するのではないかと懸念されており、このPIDを回避するために、各太陽光パネルメーカーは優れたPID耐性をもつ製品や対策技術の研究開発に取り組んでいるのが現状だ。同研究所においても、以前から研究開発を行ってきたCIGS型太陽電池にPIDが起こるのかどうかを検証することになったという。
同研究所の行った試験では、CIGS型はシリコン系太陽電池と比較して、高いPID耐性を有する太陽電池であることがわかった。出力低下の原因がカバーガラスから発生するナトリウムイオンであることを確認し、封止材(太陽電池とカバーガラスやバックシートを隔てるもの)のEVA[2]をアイオノマーに替えることで、長期のPID試験(AIST法)においても劣化が見られない太陽光パネルの開発に成功したという。
同研究所は今後、より詳細なメカニズムの解明、他のPID試験方法での評価や屋外モジュールとの比較、他の対策技術の検討などを行っていくとしている。
[1]ここではエチレンとメタクリル酸の共重合体に少量のイオンを導入したもの。食品包装材料やゴルフボール素材など広く用いられる。
[2]高温多湿な環境下の高圧連系システムでのみ見られる、モジュール内部回路と接地されたフレームやガラスとの間に高電圧がかかった状態が長期間続くことで太陽電池が劣化し、出力が大幅に低下してしまう劣化現象のこと。
[3]エチレンと酢酸ビニルの共重合体。封止材に多く用いられている。
産業技術総合研究所 – プレスリリース
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2014/pr20140318/pr20140318.html