太陽光発電の保険について
歴史の浅い太陽光発電事業にはリスクヘッジを
再生可能エネルギーの全量買取制度が施行されたことにより、多くの企業が太陽光発電事業への参入を検討しています。東日本大震災以降、日本では急速に脱原発の機運が高まり、政府も積極的に普及推進策を掲げています。太陽光発電は今後もますます期待される次世代エネルギーであることは間違いありません。
メガソーラーの建設には億単位の建設費用がかかるため、通常は金融機関の融資制度を利用するわけですが、融資を受けるにあたっては保険加入を前提条件とされることも少なくありません。太陽光発電事業はローリスクだと言われていますが、日本ではまだ歴史の浅いビジネスモデルです。稼働後、万が一発電量が低下したといったケースに対しても、それを軽減できる保険商品が求められるのは当然の流れと言えるでしょう。
太陽光発電で加入できる代表的な保険
太陽光発電事業を行う上で、加入可能な保険は大きく3つあります。
「火災保険」、「動産総合保険」、「施設賠償責任保険」。
保険の種類 | 火災保険 | 動産総合保険 | 施設賠償責任保険 |
---|---|---|---|
対象の範囲 | 火災、落雷、風災・雹災・雪災、落下・飛来・衝突、水漏れ、いたずら、盗難、破損、電気的・機械的事故を対象とすることが可能(どの原因を対象とするかは選択) | 施設賠償責任保険 | |
対象の範囲外 | 保険の対象の欠陥によって生じた損害(性能不良等)保険の対象の摩耗、使用による品質もしくは機能の低下、さびまたは腐食によって生じた損害等(劣化による故障等) | ||
対象の範囲 | 1.5~2.5% | 2.5~3.5% | - |
火災保険の場合、太陽光発電システムを設置する建造物に付けた保険加入することも一般的に可能となっています。また、年間の保険料については、基本的には「保険金額×保険料率」から算出する形になっています。
たとえば、保険金額が5,000万円とした場合、
5,000万円 × 1.5%~2.5% = 75万円~125万円/年(保険料)となります。
太陽光発電事業向けに作られた独自の商品
メガソーラーをはじめとする太陽光発電事業の普及に伴い、上記のような代表的な保険に特約を付加したサービスも登場してきています。
損保ジャパンからは、火災保険にセットした形で「売電収入保障特約」が発売されました。この特約は、太陽光発電システムが自然災害や火災などで損害を被り、当初の事業計画通りの発電量に達しなかった場合、収益の減少分を補償するというものです。これにより、売電による収支リスクを減らすことが可能となり、太陽光発電事業の参入障壁が軽減されました。
この特約では、火災や自然災害などの事故が発生した際に、営業利益の減少分に対して契約時に定めた保険金額を限度に保険金を支払います。営業利益の減少分は何を基に算出するかというと、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公表しているデータを基準にしています。太陽光発電では、事故による出力低下がなかったとしても、日射量の変化や気候変動によって発電量の増減があるため、事故発生がなかった際の売電収入予測が難しいケースがあります。これらを明確にするため、同社はNEDOが公表する地域別、月別の過去の発電量を基準に売電収入を割り出し、より実態に即した売電収益減少分を算出できるようにしました。
また、事故発生によって売電収入が減少した際に、それがもとで臨時的に発生した人件費などの費用も補償します。ほかにも、契約時に事業計画上の売電収入見込みを算出して保険料を割り出すわけですが、事業計画を上回る売電収入があった場合は追加保険料を不要とし、売電収入が事業計画を下回った場合は保険料の一部を差し戻すといったこともあります。
太陽光向けの保険商品は拡大傾向
このように、より太陽光発電事業の実態に即した保険商品が数多く生まれているのが最近の傾向です。数千~数億円規模の投資を行った上で20年間のリスクを背負うことから、ともすれば売電収入の予測値は大きなリスクとなります。
様々な参入障壁が足かせとなって容易に参入できなかった発電事業者も、保険が充実することによって融資による資金調達もスムーズに行えるようになりました。
太陽光発電のリスクヘッジに関わるビジネスは、金融や保険の世界でも大きな変革を促し、今後もより魅力的な商品が誕生していくに違いありません。