リチウムイオン蓄電池について
2012年7月1日より始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度や日本各地での電力不足問題が悪化する中、蓄電池システムに注目し、着手する企業が増加しています。経済産業省の調べによると、蓄電池の世界的市場規模は2011年の5兆1000億円から2020年には20兆円にまで増加する見通しであり、現時点で日本政府の蓄電池システムの目標シェア率は2020年の時点で50%としており、そういった背景から国内の各メーカーがリチウムイオン蓄電池の開発に力をいれている。
世界をリードする日本の蓄電池分野での技術開発に、新たな事業として期待される「リチウムイオン蓄電池」の現状と各メーカーの製品情報を本章で紹介させていただきます。
蓄電池の現状と背景
蓄電池が注目される大きな要因としては、政府による公的支援と補助金給付が第一に挙げられます。「定置用リチウムイオン蓄電池導入促進対策事業費」という政策では、企業・公共施設またはその他設備、住宅施設等の非常時のバックアップ電源や夜間電力のピークカットとしての利用目的で導入費の3分の1が国から支給されることになっており、随時発売される蓄電池は補助金対象機器として順次登録され、政策の対象となる予定になっています。
また、「グリーンニューディール基金」という環境省による政策も普及要因と考えられており。東日本大震災による被災地域を中心に公的施設を対象として比較的大きな予算規模によって該当設備の設置費用全額を補助するというもので、蓄電池システムや太陽光発電システムも該当設備として認定されています。
日本で起こった原発問題や震災をきっかけに、太陽光発電や蓄電池が注目される存在となり日本全体がとして普及拡大を後押ししているのが昨今の現状である。
蓄電池のメリット・特徴
蓄電池の一番大きなのメリットとされているのは、ピークカットを行えるという利点があります。ピークカットとは夜間割安の電気を貯めておき、電気料金の高い昼間の時間帯に夜間に貯めた電気を優先的に利用することができることです。電気を貯めたい時間帯を予めセットしておけば、自動で電気使用がピークになる時間帯に動作する。これによって昼間と夜間の電気料金の差額分が節約になり、電気料金メニューの基本料金の段階を引き下げる相乗効果も期待できる。
さらに、蓄電池事業の延長線上にはスマートグリッドやスマートハウスといった省エネ型次世代住宅と呼ばれるものや、HEMS(家庭向けエネルギー管理システム)を中核としたエネルギー機器によって家電製品をネットワーク化し、電気の供給量に応じて機器をコントロールし、電力消費を最小限に抑えたりと幅広い応用分野があります。
パナソニックからは太陽電池と蓄電池を連携して家庭内の電気をまかなう「創蓄連携システム」(住宅用発電・蓄電システム)がリリースされ、販売促進に取り組んで成果を上げている。蓄電池を太陽光と連携させ、太陽光を蓄電することはもちろん、停電時には自動的に電源を太陽光に切り替えるなど電力制御機能が働き、電気を有効活用する仕組みが設けられており、こういったことから各社メーカーはこうしたスマートハウスとしての利用を前提とした製品の研究開発に注力すると考えられています。
日本の技術力を結集し開発される製品
リチウムイオン電池に携わる日本メーカーの技術力は高く世界でも評価されており、住宅用にもその裾野が広がった時、業界として大きな収益が見込めるとの見方がある。NECは以前から日産自動車と合弁事業としてリチウムイオン電池の生産を手掛けており、これまで車載用としての実績を積み重ねています。さらに、車載用のリチウムイオン電池をそのまま住宅向け蓄電システムとして利用する仕組みも公開されており、自動車制御装置に見られる精緻な日本の技術力は世界中で注目され、期待されています。
しかしながら、昨今の国内メーカーが苦境に陥っている液晶・半導体分野で見られるように、大規模資本による製造競争になれば、中国を筆頭とした海外勢に主導権を奪われることになりかねない。日本の成長分野としての位置づけを企業全体で共通させ、原材料調達や円高対策も含めて発展していかなければなりません。
蓄電池の導入費用の価格帯について
パナソニックの蓄電池の一般的な価格帯の一例をあげてみると4.65kwhで189万円となっており、蓄電池がフル充電の状態であれば冷蔵庫やテレビなど家電を2日間程度使用できる容量となっています。また、日立製作所は7.8kwhのシステムを210万円で、NECは5.53kw型を150万円で発売している。
リチウムイオン電池は5~10年と寿命が大まかに設定されており、仮に10年使用できたとしても年間コスト20万円がかかってしまい、昼間と夜間の家庭用電気の差額を20円、夜間から昼間にシフトした使用電力を年間2,000kw/hと想定した場合で計算してみても年間コストを回収しきれない導入コストがかかるという現状がある。
このように、メーカー各社が注力した研究開発によって生産された蓄電池だが、現状は1台200万円程度という価格帯が普及拡大の問題点となっているが、2020年には蓄電池の導入台数が7万500台まで拡大すると予測されており、一般に浸透するにはさらなる低価格化が求められていることから今後価格帯が下がる可能性は大いに考えられます。
補助対象蓄電池システムの各メーカー製品紹介税
パナソニック「住宅用創蓄連携システム」
(左)
品名:LJP155 パワーステーション
寸法:630mm×H1600mm×D250mm(本体+ベース)
(右)
品名:LJB1146 リチウムイオン蓄電池ユニット
容量:4.65kWh
寸法:W450mm×H600mm×D156mm
エリーパワー「パワーイレ プラス」
品名:PPS-20 大型リチウムイオン電池内臓蓄電池
容量:2.5kWh
寸法:W320mm×H550mm×D675mm
NEC「ESSシリーズ」
品名:ESS-H-002006B 家庭用蓄電システム
容量:5.53kWh
寸法:W980mm×H1200mm×D330mm(架台含む)
ソニー「ESSP-3000シリーズ」
品名:ESSP-3003/14P リチウムイオン蓄電池
容量:3.6kWh
寸法:W520mm×H743mm×D625mm
GSユアサ「Acrostarシリーズ」
品名:LPSi1000-180-8 リチウムイオン蓄電池
容量:2.46kWh
寸法:W226mm×D535mm×H630mm
京セラ「EGSシリーズ」
品名:EGS-LM72A リチウムイオン蓄電池システム
容量:7.2kWh
寸法:W900mm×H1250mm×D345mm
ニチコン「ESSシリーズ」
品名:ESS-U1SK リチウムイオン蓄電池システム
容量:7.2kWh
寸法:W900mm×H1250mm×D345mm